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質量妨害の影響って何?

質量妨害元素と質量分解能

SIMSで測定された二次イオン質量スペクトルは、必ずしも目的元素のみからの情報が得られていない場合があります。目的元素の質量に近いイオンが存在した場合、質量分析装置の種類や質量分解能の設定により、目的元素以外の情報も含まれる可能性があるためです。目的元素に影響する質量数の近い元素を「妨害元素」と呼びます。

SIMS分析で妨害元素が生じる要因は、スパッタに用いるイオンガンの種類(酸素・Cs)、マトリクス(母材)元素、マトリクス中に多く含まれる不純物元素、SIMS装置内の大気成分系元素、多価イオン等の影響が考えられます。例として、ドーパントとして用いられる、Si基板中のPを測定する場合、質量数31のPは、Siの同位体である質量数30のSiと装置内の残留ガス成分である質量数1のHで形成される分子イオンの質量数が、Pと同じ31となるため、質量妨害の影響を受けます。同様に、Si基板中のドーパントである質量数75のAsを分析する場合は、分子イオンの質量が75となる(16O29Si30Si)が妨害元素となります。

■ 妨害元素の例(Si材料中)
分析イオン 妨害イオン 分離に必要な質量分解能(M/△M)
27AI+ (12C2H3)+ 670
31P- (30SiH)- 3950
32S+ (16O2)+ 1810
56Fe+ (28Si2)+ 2950
58Ni+ (28Si30Si)+ 3760
63Cu+ (28Si35Cl)- 3890
As- (29Si30Si16O)- 3180
As- (47Ti28Si)- 10940

妨害元素の影響を受けない測定を行うためには、質量分析機の「質量分解能」が、目的元素と妨害元素が分離できる分解能設定になっている必要があります。質量分解能は、質量スペクトルの半値幅を、着目する二つの質量の差を用いた「m/△m」で定義します。例えば、Si中のFeを測定する場合は、同位体存在比の大きい質量56のFe (56Fe: 55.93490 ) を用いると、同じ質量56の28Si2 ( 28Si+28Si: 55.95386)が妨害元素になります。両者を分離するためには質量分解能(m/△m)が2950以上 (56/0.01896 以上)の設定が必要になります。

深さ方向分析に用いるSIMSの質量分析機は、二重収束型質量分析機(磁場型SIMS)と四重極型質量分析機(四重極型SIMS)が用いられています。 装置構成につきましては、弊社HPをご参考下さい。それぞれの装置の質量分解能は、磁場型SIMSが「300~10000」程度、四重極型SIMSで「300~1000」程度です。従いまして、妨害元素を除去するためには、高い質量分解能の得られる磁場型SIMSが使用されます。

未知の材料や高濃度の不純物が含まれている場合には、事前に妨害元素を予測することが難しいことがあります。データが予想と大きく異なった場合などには、質量妨害の影響を受けている可能性があることも、データ解釈をする上で知っておくことも重要です。

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