表面分析からこんなことがわかります

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はじめに

有機物や高分子を測定出来る手法は多くありますが、表面に限定したとき有機物の検出や同定に適した手法は少ないです。TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)は表面に特化した手法で感度も良く、かつ無機・有機どちらも検出できる点は他に類を見ない分析手法です。一次イオンの照射量が少ないのでイオン化過程での試料表面ダメージが少なく、分子を直接イオン化出来る特長を持っています。また、表面でのイオン像が取得できる点も優れており、サブミクロンの空間分解能で表面の分子の分布観察も可能です。これらの特長を最大限に発揮できる分野がライフサイエンスや医薬・医療デバイスの分野です。
断面加工などの前処理を適切に行うことにより生体組織やステントなどの医療デバイス内での薬の含浸具合を目で見える形で検出でき、薬の効果の研究やデバイスの改良に貢献できます。

ここでは生体組織中の薬の代謝物の分布を調べた例を紹介します。

生物組織中の異物の同定(BN1505)

生体組織中に取り込まれた異物や介在物などを分析するのは容易ではありません。それは組織試料のサイズが数ミクロンオーダーになるためです。有機化合物成分を測定するのによく利用される液体クロマトグラフ-質量分析(LC-MS)の場合、切開した細胞組織ではしばしば感度不足に陥ります。それに対して、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)は切開した細胞組織を直接観察することが出来る分析手法であり、数ミクロンサイズの領域のみから質量スペクトルを得ることが出来る能力を持っています。

本例では、腎臓に生じた異物をクライオマイクロトームで断面加工して測定した例を紹介します。異物のTOF-SIMSスペクトルでは、質量m/z331で顕著な分子の存在が確認できます。このイオンはプロドラッグであるXemilliofiban(Figure1参照)のエステル分解した代謝物の質量と一致します。 Figure2に示すイオンイメージは、m/z331のピークを含む10の代謝物ピークから作成したものです。異物の光学顕微鏡像から異物とTOF-SIMSの代謝物イオンイメージとの相関がよく分かります。

*プロドラッグとは;そのままでは不活性或いは活性の低い形態で投与される医薬品のことをいう。プロドラッグは投与されると、生体による代謝作用を受けて活性代謝物へと変化し、薬効を示す。
*Xemilliofiban;血液凝固を防止する薬で、血小板に働きかける薬。

Figure1.TOF-SIMSの正イオンスペクトルを示す。(a) Xemiliofibanプロドラッグ (b) エステル分解した代謝物 (c) 実際の異物

Figure2.(a) 異物断面の光学顕微鏡像 (b) 10の代謝物ピークから生成した異物のTOF-SIMSの正イオンイメージ

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