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AFM分析による医療機器向けヒドロゲルコーティング表面の測定(BN1424)

~高分子材料の表面粗さ、位相像の測定~

AFM分析(原子間力顕微鏡法)は分析試料の表面粗さを測定する手法として広く使われています。表面粗さの測定では、プローブの先端と試料表面間に作用する原子間力に着目して計測しています。

AFM分析は原子間力以外の相互作用も測定することが可能で、磁気力(MFM)、表面電位(KFM)、摩擦力(FFM)、キャリア濃度(SCM)等の測定が可能です。

これ以外に、カレンチレバー(プローブ)を振動させながら試料表面を走査し、試料表面の吸着・柔らかさなどの物理物性の違いによる振動の位相遅れに着目して画像化することも可能です。この像は位相像と呼ばれ、高分子材料の粘弾性測定で広く使用されています。

本事例紹介では、ヒドロゲルコーティングの表面粗さと位相像の分析事例を紹介します。

はじめに

医療機器に使用される材料は、適切な構造特性と機械特性を備えているだけではなく、重度な肉体的反応を引き起こしてはなりません。そして、治癒反応を促すことも必要です。医療機器設計者は機能性や生体適応性の要求に満たすために、接合表面処理の使用を含めた様々な表面処理を用いています。医療機器表面へのコーティングを適用することにより、潤滑性、疎水性/親水性、および生体適合性といった性質を強化・改良することができます。

医療機器設計者は血栓症や再狭窄の発生を低減するために、冠動脈ステント表面に、例えばヘパリン(凝血を防ぐ抗凝固薬)などのコーティングの研究を行っています。多くのカテーテルはヒドロゲルでコーティングされています。ヒドロゲルコーティングは加湿するとカテーテル表面を滑らかにし、挿入前の取り扱いを困難にすることなく、容易にカテーテルを挿入することができます。

医療機器製造者は医療機器の表面に塗布したときのコーティングの作用を理解することが重要です。従来の走査型電子顕微鏡(以下SEM分析)による観察は、非導電性試料上のコーティング膜の表面を観察することは困難です。またSEM分析による観察は、通常高真空中で行うため、分析試料は完全に乾燥していなければなりません。ヒドロゲルの主成分のほとんどは水であるため、真空中で分析作業は重大な障害となります。

一方、AFM分析は、絶縁体上でも導体上でも同様に機能し、乾式および湿潤試料の両方を測定することができます。AFM分析では他の技術では容易に入手できないような高解像度の表面粗さを測定することができます。

分析結果

図1に潤滑性のヒドロゲルでコーティングされたポリウレタンチューブの5μm×5μmの領域の表面粗さを示します。色は凹凸の高さを示します―低い領域を青色、高い領域を赤色で示しています。高さ(Z)の範囲は100nmです。

■ 図1 潤滑性ヒドロゲルコーティングの表面粗さ
潤滑性ヒドロゲルコーティングの表面粗さ

図2は表面粗さ測定(図1)と同時に取得された位相像です。位相像は振動カンチレバーの位相遅れを表示しています。位相遅れは表面の物理特性に起因して発生します。この位相像は、コーティング層に面内で異なる物理的特性持った領域があることを示しています。これらの異なる領域は、図1の表面粗さではほとんど分かりません。

■ 図2 図1と同じ測定箇所の位相像
図1と同じ測定箇所の位相像

図3にポリウレタンチューブの加湿後の位相像を示します。加湿後のチューブの表面は非常に均一でした。これは水の添加がコーティングの特性を劇的に変えたことを示しています。加湿後のチューブの位相像は大気雰囲気下で測定したものですが、分析試料は液中下でも測定することもできます。

■ 図3 加湿後のチューブの位相像
加湿後のチューブの位相像

まとめ

AFM分析の特長を下記にまとめます。

  • ナノスケールの表面粗さと物理特性を測定することが可能
  • 絶縁性サンプルも測定可能
  • 大気環境または制御された雰囲気条件下で測定可能
  • 試料前処理を行わずに測定可能

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